起業の詳細について
形態(法人or個人事業主)
法人
起業した経緯
故郷に錦を飾るため。私が生まれ育った町は過疎化が進んでおり、中学を卒業したら進学のために町を離れ一人暮らしをしなくてはなりません。高校を卒業しても過疎が進む故郷に仕事はなく、故郷に戻れるのは家を引き継ぐ者だけ、他の者は故郷に戻ることは許されず都市部で働かなくてはなりません。故郷に戻って働ける者が羨ましかった、その思いで頑張って働きお金を貯めて都市部で起業した。その起業は成功した、すると、私の成功を知った故郷から「戻って来て欲しい」と言われ、故郷で2度目の起業をした。
起業前の経歴
義務教育とは違い、学力に応じた高校にしか進学できない。私は進学校に進むことも出来たのだが、高校を出ても大学に進学できる経済的余裕はなかったため、在学中に様々な資格を取ることが出る技術系の高校に進学。高校を出て働く会社は、休みはいらない、残業は沢山あって構わない、とにかくお金を沢山稼げるところを選んだ。沢山働けば、それだけスキルが身に付く、取引先の評判も良い、すると、「出資をしてあげるから独立しなさい」と言ってもらい、最初の起業をした。高校を出た私が働いたのはプラスチック製の商品を作る会社、独立して起業したのも同じ業種、故郷に戻って起業したのも同じくプラスチック製の商品を作る会社。
起業内容
大量生産をしようと思うと安い人件費で済む海外で起業する者が多く、一時期は海外で起業するのが流行ったのだが、流行りで海外で起業した私の知り合いは全滅。私も安い労働力には惹かれたのだが、私が作るプラスチック製の商品は暑さに弱いため、大量輸送が可能な船のコンテナで運ぶことは出来ない。人件費が安くても輸送費にお金が掛かってはコストダウンにならないため、国内で作るしかない。精密機器に使われるプラスチックだが、作るのは全て機械、人間が関わるのは機械のメンテナンスと検査、配送のみ。
イメージしていた成功ストーリー
過疎化が進む故郷では仕事がなく、進学を機に故郷を離れたら若者は帰って来ない、それでは、いずれ故郷は消滅してしまう。進学を機に一時的に故郷を離れても、私が故郷に雇用を産み出せば、若者は仕事がある故郷に帰って来られる。過疎化が進む町は貧しい、貧しさから脱却するには頑張って働くしかない、そのことに従業員が一丸となってくれれば故郷は復活する。お金を稼げるようになれば、従業員だけでなく町の人の自信にもなる。故郷に錦を飾ることが出来れば、私を育ててくれた家族や親戚、先生は喜んでくれる。
サービス・商品メニュー内容
フルオートメーションによって製造するのだが、数万個に1つの割合で不良品が出る。その不良品を見逃し納品してしまうと、信用を失い取り引きしてもらえなくなるため、人を使って不良品を見付け出さなくてはならない。精密機器に使われるパーツのため、工場に入るには体に付いたホコリ等をエアーで落とす、従業員は白衣にマスクをして働く。
上手くいった点
私は都市部でも工場を持ってるが、都市部は容易にお金を稼げる仕事が沢山あるため、若い子は特に工場で働きたがらない。一方、私が起業した町は仕事がないため、求人を出すとあっという間に人が集まった。集まってくれた若者の中には、高校を出たばかりの新卒者もいた。貧しい町のため娯楽施設はなく、集まった従業員は皆真面目。故郷で起業をしたのは、故郷から「戻って来て欲しい」と言われたから、そのため、工場を建てる土地は格安で借りることが出来た。
失敗した点
なぜ過疎化が進んだのだろう?田舎だと地理的に不利な面があるのは理解出来る、しかし、観光地など地理的に不利な面がある田舎でも発展しているところはある。田舎では進学を機に故郷を離れるが、全ての者が故郷から離れるわけではない。家の跡取りでなくても故郷に残れる者はいる、故郷に残れる者と残れない者の違いは優秀かどうか。残念なことに、私の会社に集まったのは優秀とは言えない人材ばかり。働く環境で育ってないと、働く習慣が付いてないため残業をとにかく嫌がる。集まった者の多くは同じ名字、つまり、親戚関係。一人が会社を辞めてしまうと他の親戚も辞めてしまう。故郷に錦を飾るつもりで、故郷に戻り起業したのは私が初めてではない。私以外で起業した者は全滅、一つの会社も残っていない。会社が出来ると働く、潰れると農業や酪農で生計を立てる。会社が出来ては潰れるの繰り返し、これでは町は潤わない。
特に心に残っている失敗エピソード
仕事がない田舎に起業をすると、名士になったかのような扱いを受ける。イベントがある度に寄付を求められ、名士の扱い受けている私はお金を寄付しなくてはならない。私が多額なお金を寄付したのは町の発展に繋がればとの思いから、しかし、寄付したお金は飲み会の酒代に使われた。娯楽施設がないため酒を飲むしか楽しみがないのだろうが、酒を飲んでも何も残らない。私が故郷の人から言われた「戻って来て欲しい」とは、要は「お金を持って来い」ということ。田舎の人は一見優しく見えるが、「金の切れ目が縁の切れ目」、お金を持ってないと分かると冷たい。会社を畳む時は、誰も来てくれなかった。
起業の結果について
人数(社員やアルバイト)
パート15名、正社員5名
最大月商
約3000万円
最大借金
約3億円
結果(今の状態)
故郷に作った会社(工場)は5年と持たず整理した。故郷の会社の近くには実家や親戚が住んでいるのだが、会社を整理している時に誰も手伝いには来てくれなかった。
最初に起業した時にお世話になった人に相談をすると、某工業団地を紹介され、そこに使っていた機械を運び事業を続けている。その工業団地は都市部から離れてはいるが、他の会社と共同でバスを走らせているため、都市部で暮らしている人はそのバスに乗って通勤している。残業で稼げるようになると、定時に出てしまうバスでは不便なため、車で通勤をするようになる。車が多く停まっている会社は業績が伸びている、私の会社も車通勤をする者が少しずつではあるが増えている。
過去の自分が改善すべきだった点
故郷に錦を飾るのは、男なら誰もが一度は考えること。しかし、世の中の流れは、一企業の努力だけではどうにもならない。田舎が存在しているのは、都市部で稼いだお金のお陰、そのお金が無ければ、田舎はとっくに消滅している。田舎はたまに行く分には良いが、ずっといるところではない。私の故郷のため従業員の中には親戚もいたのだが、会社を畳んでからは誰とも会っていない。親戚のよしみで、事業に協力してもらえるという甘い考えが私にはあった、しかし、親戚でも「金の切れ目が縁の切れ目」、イヤ違う、親戚だからこそ「金の切れ目が縁の切れ目」になったのだ。
これから起業する人へのアドバイス
なんとかして故郷のためになりたいと思うのは自由だが、思うだけにしておけ、実行に移すべきではない。起業家は1から10まで全てにおいて独断で決めることは出来る、しかし、反対に全てにおいて責任を負わなくてはならない。起業は男と女と関係と同じで、始める時より終わるほうが数倍大変。良く言われることだが、信用を築き上げるには時間が掛かるが、信用を失うのは一瞬。起業をするなら、閉業する時のことも考えておくこと。起業をするにはお金が掛かるが、閉業をするにもお金が掛かる。起業時には出資してもらえるが、閉業する者には誰もお金は出してくれない。保証人を誰にしてもらうか迷うだろうが、身内はヤメておけ、身内は最後の砦に残しておく。事業計画を話して保証人になってもらえないなら、その事業は上手くいかない。身内しか保証人になってもらえないのも同じこと、起業は甘くない。
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